「築古物件」購入・再生ガイド
「築古物件」を活用するための不動産プレイヤー必見の診断ツールとは!
不動産市場が活況を呈する中、不動産プレイヤーにとって悩ましいのが「築古の旧耐震物件をどのようにとらえるか」ではないでしょうか。このコーナーでは、築古物件の購入や再生に踏み出すかどうかの判断材料として「使える」建物の診断ツールをご紹介します。
「築古物件」は買いか?
ここでいう築古物件とは、1981(昭和56)年に改定された新しい耐震基準(新耐震基準)が適用される以前に建てられたいわゆる「旧耐震」の物件をさします。旧耐震基準による築古物件の購入をめぐっては不動産プレイヤーの間に例えば以下のようなジレンマが存在しています。
- 立地などの諸条件は非常に魅力的だが、築年数を考えると手を出せない
- リノベーション・用途変更を織り込んで購入したいが、資金調達が困難である
- 耐震診断・補強のコストをふまえると採算ラインが見えてこない
このようなジレンマが生じるのは、(1)建物の耐用年数が資金計画(融資づけ)に直結する、(2)耐震診断・補強のコストは非常に大きい、と考えられているからではないでしょうか。
法定耐用年数=建物の寿命ではない
不動産の耐用年数といえば、一般的には法定耐用年数のことを指すと考えられていますが、そもそも法定耐用年数とはどのような根拠に基づいているのでしょうか。
実は、法定耐用年数はあくまで減価償却費を計算するために便宜上設けられた償却年数で、課税の公平性確保のために画一的に設けられた基準なのです。
例えばSRC造の事務所の場合、過去60年間で法定耐用年数は図のように2回改定されています。これらは税制改正によって改定がなされたもので、工法の変化などによって建物の実態的な強度が変化したわけではないのです。つまり法定耐用年数とは政策的な意味で設けられた基準であって、建物の実態的な耐用年数を示したものではないのです。
物理的な耐用年数は法定耐用年数を上回る
実際に多くの調査結果により、建物の物理的な耐久限度は償却年数、すなわち法定耐用年数を上回ることが明確になっています。例えば、ロングライフビル推進協会の「建築躯体・部材・設備等の耐用年数調査」報告書ではRC造の建物について60年以上、75年、100年超といった耐用年数を判定しているケースが確認できます。このような実態的な耐用年数に着目し、経済的な観点から建物にどれだけの耐用年数が残存しているかを「経済的耐用年数」という形で指標化することも行われています。
融資実行判断をサポートする「経済的耐用年数診断」
経済的耐用年数の判定では、需要動向や災害リスク、地盤状況などを見極めるための机上調査、建物の品質や修繕レベル、管理の良否を判断するための現地調査が行われます。これにより、築年数は経過していても経済的な耐用年数が残存している建物を示すことが可能なのです。すなわち、築古物件でも担保適格性が高い不動産を見極め、金融機関の融資実行判断をサポートすることができるのです。
築古物件と耐震診断
築古物件の耐震性能を手っ取り早く診断する方法として、「簡易診断」という言葉を耳にする機会があるかも知れません。一般的な「簡易診断」とは「1次診断」と言われる現地調査を行わなくても可能な耐震診断であり、安価で簡便な反面、精度が低く、耐震工法の決定まで踏み込むことが出来ないのが実情で、結局別の方法で再診断をすることが必要となりがちです。
一方で、2次診断と呼ばれる精密診断では、現地調査でのコンクリートのコア抜きなど物理的な強度の検査を行います。コストは当然1次診断よりも大きくなり(床面積1㎡あたり2,000円~)、診断確定までの時間もかかります(最低でも3カ月)。
(各種の耐震診断の方法の詳細は当サイトの「耐震補強の基礎知識」でご紹介しています。)
不動産プレイヤーにとって使い勝手のいい耐震診断とは?
上記二つの耐震診断を比較すると、不動産プレイヤーが購入前の判断に用いるものとしては片や情報が不十分、片やコストがかかり過ぎますが、二つの診断のいわば「良いとこどり」をして不動産の購入判断に十分使える診断法が開発されています。これが「簡易2次診断」です。簡易2次診断では、1次診断(簡易診断)では通常行わない電算を実施して精度を高める一方で、現地調査は行わずにコストを抑制。コンクリートの抜き取りなど物理検査も行ないません。このため、図面さえあれば自らが所有していない物件についても診断が可能となります。
築古物件の購入判断に唯一可能な選択肢を提供
ここでご紹介した「経済的耐用年数診断」「簡易2次耐震診断」はいずれも「低コストで採算プラン策定や資金調達に必要な情報を得ることができる」という意味で、リノベーション・リニューアルを視野に築古物件の購入を検討する不動産プレイヤーにとって最適にして唯一のツールであると言えます。