基礎知識耐震診断

耐震補強の基礎知識

耐震補強の基礎用語【入門編】

今回は、「耐震補強の基礎用語」ということで「耐震・制震・免震」、「新旧の耐震基準」、「各種の耐震診断」の違いと耐震診断の指標となる「Is値」について解説します。

耐震・制震・免震

耐震とは、地震力に対して耐久性のある構造にすること。地震の揺れに耐えること。

制震とは、建物にダンパーなどを置き地震の揺れを吸収すること。

免震とは、建物と基礎との間に免震装置を置くことで地震の揺れを建物に伝えないようにすること、とそれぞれに違いがあります。

耐震・制震・免震の特徴と違い

旧耐震基準と新耐震基準

旧耐震基準と新耐震基準

1950(昭和25)年制定の建築基準法は建物の耐震性の基準を規定しています。制定後、耐震基準は度々改正されていますが、特に1981年6月1日の改正を境に、これ以前を「旧耐震基準」、これ以後を「新耐震基準」と呼ぶようになりました。新耐震基準は、「震度6強以上の大規模地震で倒壊・崩壊しない」「震度5強程度の中規模地震でもほとんど損傷せず軽微なひび割れ程度にとどめる」ことを求めています。一方で、旧耐震基準では大規模地震については特に規定がありませんでした。1995(平成7)年の阪神・淡路大震災でも現在の耐震基準を満たさない1981(昭和56)年以前の建物に被害が集中したとされ、2016(平成28)年の熊本地震後の益城町での調査でも、建物の倒壊率は旧耐震基準が32.1%、新耐震基準が7.6%と明確な相違が確認されています。

耐震診断(1次診断、2次診断、3次診断)

耐震診断の種類と特徴

旧耐震基準で建築された建物に対して、現行の基準(新耐震基準)に適合する耐震性を備えているか否かを確認するために行う診断で、構造耐震指標であるIs値を求めます。非木造建築物(RC造・SRC造)の耐震診断には大きく分けて3種類があります。

<1次診断>

鉄筋量やコンクリート強度を用いず壁と柱の量から耐震機能を診断します。壁の多い建物に向いているとされ、比較的簡便に実施できることから簡易耐震診断と呼ばれることもあります。1次診断については耐震指標としてIs値0.8以上が求められます(通常は0.6以上)。

<2次診断>

壁と柱の量とコンクリート強度などから診断を行うもので、ラーメン構造の建物に最適なため最も多く採用される耐震診断の方法です。実地調査でコンクリートのコア抜きによる強度試験のほか、部材寸法調査、鉄筋量・配筋の検証も必要です。

<3次診断>

壁・柱に加え梁、フレーム形式、壁の脚部回転も考慮する診断方法です。一般的なラーメン構造の建物では、結果が過小評価されるので用いられませんが、階数が多かったり、複雑な構造の建物で用いられることがあります。

Is値(アイエスち)

耐震診断に使用される構造耐震指標のことです。建物の階層ごとに計算されます。2006(平成18)年の「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」では「倒壊、または崩壊する危険性が低い」」耐震指標をIs値0.6以上としており、それ以下の建物では補強の必要性があると判断されます。Is値は建物の強度と靭性(粘り強さ)、形状(バランスなど)、経年劣化それぞれの指標を考慮して求められます。